不老長寿、難病治療、災害救助──。
一昔前ではSF小説の世界でしか見られなかった技術が、
現実の世界で身近になりつつある。
より人間らしく幸せに生きられる最新技術を探った。
* * *
ロボットが、日常生活を変える。
そんな日も遠くはない。
ロボットを操作してタオルを折りたたむ「練習」を
何度もする。
そうすると、ロボットが折り方を「学習」して
他のタオルも折りたたむことができるようになった──。
早稲田大学教授の尾形哲也さん(47)らは、
自ら学習して行動するロボットの「頭脳」を
開発している。
実は、人間が簡単にできることほど、
ロボットにとっては難しいという。
通常のロボットだと、あらかじめ決まった同じ色や形、
素材のタオルしか折りたためない。
それを克服しようとしているのが、
ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人工知能だ。
尾形さんらが開発したロボットは視界や音の情報、
入力した言葉、ロボット自身の動きの情報などをもとに、
ディープラーニングによって、環境を認識して自らの動きを
作り上げることができる。
ロボットは、タオルの色や形、素材が変わっても
折りたためるというわけだ。
さらに、
「タオルの代わりに本を開いて置いてみたところ、
これを閉じました」
と尾形さん。
ロボットがまるで、親をまねる
子どものような動きをするのだ。
●アルゴで発情を推定
「うちの実家は田舎で、庭の草むしりが大変。
私が東京にいても、遠隔操作でロボットが
草むしりをしてくれたらいいですよね」一方、
等身大の人型ロボットの開発も進む。
と東京大学教授の稲葉雅幸さん(58)がほほ笑む。
「もともと家の中で家事を手伝ってくれる
人型ロボットを開発してきた」という稲葉さんら
情報システム工学研究室(JSK)が開発した
身長188センチの人型ロボット「JAXON」は、
家事だけではなく屋外での災害救助もできる。
故マイケル・ジャクソンのような足さばきが
できるようにと名前をつけた。
災害現場で車に乗ったりドアを開けたり
消火器を上手に扱って火を消したりできるよう
研究が進められている。
(編集部・長倉克枝)
※AERA 2017年1月2-9日合併号