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「ロボット失業」に企業はいかに備えるべきか

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「ロボット失業」に企業はいかに備えるべきか

元記事はこちら。

ハーバード・ビジネス・レビュー誌は先ごろ、「ロボットが仕事を奪うならば、企業は機転を利かせて新たな役割を作り出すべき(As Machines Take Jobs, Companies Need to Get Creative About Making New Ones)」と題した記事を掲載した。著者は教育機関「シンギュラリティ・ユニバーシティ」のダーリン・ダム。

テクノロジーの進化がもたらす業界構造の変化や失業への対策として、企業は「人間的サービスを重視する新しい市場へとシフトとして、従来とは異なるビジネスモデルを導入していくべき」と主張し、実例を挙げてその手法を解説している。(以下、抄訳)

小売、運輸、製造、農業などは技術進化の影響を受けやすい

ダムはまず冒頭で、「小売や運輸、製造、農業などの仕事は、技術革新の影響を非常に受けやすい」と指摘し、小売業で起こっている変化として、大手小売店の相次ぐ店舗閉鎖や、オンラインショッピングの増加、ロボット・アシスタントの導入、全自動の無人店舗計画などを挙げる。

さらに運輸業では、現在33社が自動運転車の開発に取り組んでおり、近い将来にドライバーの仕事が代行されること、製造業では2000年以来、アメリカ国内で失われた500万人の雇用の8割以上がおそらくロボットによって「奪われた」こと、さらに農業でも自動化が急速に発展していることを指摘。

この上でダムは、「テクノロジーの進化に対して我々がなすべきことは、企業が人間的サービスを重視する新しいマーケットにシフトして、新たなビジネスモデルを導入する手助けをすることで、従業員や顧客、コミュニティがその恩恵を受けられるようにすることだ」とコメント。

スーパーマーケットが、コミュニティのつながり強化を担う未来

この具体的な手段として、ダムはまず、オンラインショッピングの隆盛により存在価値を脅かされている大規模小売店は、「コミュニティに便益を図る」方向へシフトすべき、と主張。その先行例として、ウォルマートが現在店舗内で、視力検診や美容院、レストランなどのサービスを提供していることを挙げる。

「提供できるサービスはもっと多くあるはずだ。ヨガやフィットネス、料理、栄養学、健康促進などの教育コースを安価に提供してはどうか? あるいは育児サービスや高齢者介護、心理カウンセリング、リハビリ、コミュニティグループの会場提供なども選択肢だ」とダムは指摘。

「これにより、新たな収益ソースができ、コミュニティの改善に役立つことができる。そして過去にはレジ係、商品補充、床掃除などの仕事をしていた従業員のために、新たな仕事やスキルセットを提供できる」

「従業員への自社株提供」が、ロボットによる失業を救う?

オートメーション導入に関する別の解決案として、ダムは「従業員への自社株提供」を主張する。「世界の革新的企業はすでにこれを実践している」と述べ、この試みは人材採用や社員報奨の取り組みとして役立つ上に、技術進化のマイナス面である失業に対するバッファー(緩衝剤)ともなると指摘。

ダムによれば、多くの人は「ストックオプション(自社株購入権)」と聞くと、起業家やIT産業の社員だけに縁あるものと考えがちだが、これは誤解だという。食品業界では、スターバックスを始めとして多数の企業が、このモデル提供を推進していると指摘。

2016年には乳製品企業チョバーニが、自社株の10%を従業員2000人に分配したことをダムは例に挙げ、「こうしたアプローチは、単純に従業員により多くの富を移行することで、彼らの経済的保障を強化して、技術進化がもたらす失業に彼らが備えるのに役立つ。将来的に仕事の自動化を計画している企業では、これはとりわけ価値がある」と主張。

従業員が自社株式を保有していれば、たとえロボットに仕事を奪われても、「実質的には恩恵を受けるかもしれない」とダムは指摘。ロボットがもたらす生産性拡大により企業収益が増加し、結果として株価が上がるからだ。

「Uberが自動運転で成功すれば、失業した元運転手も得をする」

ダムは配車サービスの「Uber」を例に取って、「もしUberが数年後に自動運転車企業として成功すれば、元運転手たちは金銭的に得をすることになる。ストックオプションは、従業員たちに未来のオーナーになる可能性、彼らの仕事を代行したロボットの受益者となるチャンスを与えるものだ」と指摘。

「こうしたビジネスモデルが拡大して主流になれば、経済全体が潤ってすべての人々の分け前が大きくなるだろう」とダムはコメントしている。

参考:As Machines Take Jobs, Companies Need to Get Creative About Making New Ones (May 22 2017)|Harvard Business Review

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