【記事】無人の自動運転レース開幕 命守る技術結集

「アルゴリズム」で疾走

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元記事はこちら。

2016/9/20付[有料会員限定]

世界のヒト・モノ・カネが猛スピードで人工知能(AI)の分野に流れ始めた。企業がソフトウエアやコンピューターでビジネスを変革する大競争の幕開けだ。AIといかに共存するかという新たな問題も提起されている。企業、産業、暮らしはどう変わるのか、最前線を追う。

シグナルが緑に変わった瞬間、レーシングカーが一斉にアクセルを踏んだ。最高時速は300キロメートルを超す。電気自動車レース、フォーミュラEの都市をぬうようなサーキット。ライバルにぶつかるな、コーナーは速度を落とせ。一番速くて、優秀なドライバーは俺だ。

2017年中に計画されているフォーミュラEの前座「ロボレース」は、自動車レースの歴史を塗り替える。ドライバーが人間でなく、AIなのだ。走る、曲がる、止まる。これらの粋を競ってきた世界最高峰のトラックで、勝敗を分けるのはアルゴリズム。10チームが参戦、優勝すればプログラマーが表彰される。

「これは知性を競うレースだ」。企画した英国のベンチャーキャピタル、キネティックのデニス・スフェルドロフ最高経営責任者(CEO)は自動車のイノベーションを加速させる役割を自任する。スフェルドロフ氏はロシアの通信事業者ヨタでCEOを経験し、表裏両方に画面があるスマートフォンをつくった。

「ホンダやソフトバンクのような企業に参戦してほしい」。8月に来日、企業を回った。手を挙げる世界の自動車、IT(情報技術)、ソフトの企業や研究機関は100を超える。大会の運営関係者は「日本から1チームは選びたい」と話す。

■1秒24兆回計算

各チームにデザインと機能の同じ電気自動車が渡される。コーナーでどうぶつからないようにするか、いつスピードをあげるか。レーザーや超音波のセンサー情報をどう活用するか。判断のパターンを自ら発見する深層学習などの技術を使い、各チームが運転のアルゴリズムを開発する。

アルゴリズムは1秒間に24兆回計算するスーパーコンピューター「ドライブPX2」の上で動く。半導体メーカーの米エヌビディアが提供する。

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PX2は弁当箱2つのサイズ。そこに、20年前ならテニスコート5面分の大型コンピューターが必要だった計算能力が詰まっている。独フォルクス・ワーゲンや米ゼネラルモーターズなど80社で使われ、自動運転研究の根幹を握っている。

エヌビディアは他にも様々なAI用コンピューターを開発した。ダニー・シャピーロ・シニアディレクターは急増する需要を肌で感じ「AIがあらゆる産業の未来を変えていく」と確信する。

 米電気自動車メーカー、テスラモーターズのイーロン・マスクCEOは物理学者スティーブン・ホーキング氏らと15年、AI研究は人間に有益なものにすべきとする意見をまとめた。今年5月、世界で初めて起きた自動運転モードでの死亡事故がテスラ車になったのは痛恨だった。

それでも自動車メーカーの多くは、人間より計算の速いコンピューターが判断能力も備えれば、世界で年125万人に及ぶ交通事故の死者を減らせると考える。事故の9割は人間の運転ミスだ。

「事故ゼロを目指す」。トヨタ自動車の豊田章男社長は16年1月、米カリフォルニア州にAIの研究所を設立、5年間で10億ドル(約1030億円)投じる。自動運転は米グーグルや中国・百度などインターネット企業が参入し、提携が急速に増えている。独ボルボと8月提携した配車アプリの米ウーバーテクノロジーズなど、多くのグローバル企業がロボレースに関心を持ちそうだ。

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